#紹介

19世紀イギリスのアッシリア学者ジョージ・スミス(George Smith, 1840–1876)は、大英博物館に勤務し、古代メソポタミア文献の解読で大きな業績を残した人物です。とくに、のちに『ギルガメシュ叙事詩』として知られることになるメソポタミアの洪水物語を解読・紹介したことで広く知られます。1875年に刊行された 『Assyrian Discoveries』 は、ニネヴェ遺跡を中心とする二度の発掘調査の記録と、その成果にもとづく歴史・文化的考察をまとめたもので、初期アッシリア学の発展を知るうえで重要な著作です。

生き生きと描写された旅の様子も面白いものですが、最も注目すべきはやはりギルガメシュ叙事詩の発見でしょう。未だこの英雄の名前は知られておらず、ジョージは楔形文字の読みに従ってギルガメシュをイズドゥバル、エンキドゥをヘアバニと読み下しました。ジョージはイズドゥバルを聖書物語に登場するバビロニアの勇士ニムロドそのひとであろうと考えました。19世紀のギルガメシュ叙事詩がどのように語られているか、十一章をぜひ読んでみてください。

目次

  • 序文 ... -

  • 第一章 ユーフラテス川とチグリス川の谷におけるこれまでの発掘と発見 ... 1 - 8

    主題の興味⸺ボッタの発掘⸺レイヤードの業績⸺ローリンソン⸺ホルムズド・ラサム⸺ロフタス⸺楔形文字の解読⸺グローテフェント⸺ローリンソン⸺ベヒストゥーン碑文⸺ヒンクス⸺オッペルト⸺後の解読者たち

  • 第二章 一八六六年から一八七二年にかけての発見 ... 9 - 14

    イエフの年紀⸺アッシュールバニパルの年代記⸺紀元前七六三年の日食⸺ペカ⸺ホシェア⸺アザリヤ⸺初期エラムの征服⸺宗教暦⸺安息日⸺バビロニア人の初期史⸺洪水のカルデア人伝承⸺『デイリー・テレグラフ』紙からの申し出

  • 第三章 ロンドンからモースルへ ... 15 - 45

    パリ⸺マルセイユ⸺地中海⸺パレルモ⸺エトナ⸺シロス⸺スミルナ⸺アレクサンドレッタ⸺ベイラン⸺宿⸺ベイランの峠⸺アフリン⸺ロバー⸺アレッポ⸺トルコの祝日⸺ユーフラテス川⸺チャルメレク⸺オルファ⸺米国の宣教団⸺トルコにおけるキリスト教徒⸺ヴァレンシャハル⸺ハブール川⸺ニシビス⸺シャマー・アラブの蜂起⸺ロフク⸺アブドル・カリーム⸺テリベル⸺ジェジレ⸺チグリス川⸺ハブール⸺ザチョ⸺驢馬使い⸺ニネヴェ

  • 第四章 バビロニア訪問 ... 46 - 68

    モースル――宿営所――トルコのパシャ――フランス領事――ヴァルニラリの碑文――いかだ――ニムルド――カラフ・シェルガット――岩と洞窟――ティクリト――バグダッド――ハーバート大佐――バビロン――バベル――城壁の範囲――カスル――空中庭園――ビルス・ニムルド――塔の七層――バビロンの廃墟――ハイマー――テル・イブラヒム――クタ――アラブの野営地――モースルへの道――エルヴィル――ザブ――ガズル――渡し船。

  • 第五章 ニムルドにおける発掘 ... 69 - 85

    トマ・シシュマン⸺塚⸺塔⸺宮殿⸺歴史⸺ネボの神殿⸺南西宮殿⸺手の模型⸺南東宮殿⸺彩色された壁⸺翼を持つ像⸺墓⸺家屋建築⸺アラブの歓待⸺精密な発掘

  • 第六章 コユンジクにおける発掘 ... 86 - 103

    ニネヴェの城壁⸺北門⸺コスル⸺大門⸺ネッビ・ユナス⸺コユンジク⸺宮殿⸺歴史⸺ニネヴェの陥落⸺図書館⸺ハムム・アリ⸺コユンジク北宮殿⸺法の粘土板⸺洪水の断片⸺発見⸺コルサバード⸺閉鎖の命令⸺音節表⸺ニムルド訪問

  • 第七章 モースルからイングランドへ ... 104 - 118

    心付け—水車の小川—ジュベル・アブジャド—河川の力—洪水の山々—物語—コスティ氏とカー氏—砂漠のアラブ人—ニシビス—負傷したアラブ人—オルファ—アブラハムの池—城—ビラジク—アレッポ—トルコの税関—欺瞞—アレクサンドレッタ—古代遺物の押収—それらの返還

  • 第八章 モースルへの第二の旅 ... 119 - 134

    出土品の返還⸺新発見⸺シリアのロバー⸺厳冬⸺チャルメレク⸺カラ⸺ディナサル⸺トルコの徴兵⸺アブドル・カリーム⸺非正規兵⸺ニシビス⸺余興⸺踊る少年⸺デルナ⸺郵便での旅

  • 第九章 コユンジクにおける発掘調査 ... 135 - 152

    アリー・ラハール⸺トルコの知事⸺レディフ・パシャ⸺新たな方針とトルコ側の要求⸺神殿⸺風変わりな陶器⸺初期の宮殿⸺ローマの瓶⸺北の宮殿⸺荒廃した入口⸺完存する二言語碑⸺シャルマネセル一世の碑文⸺セナケリブの宮殿⸺入口⸺書庫の間⸺分岐⸺歴史的円筒⸺困難⸺作業の終了

  • 第十章 アッシリアからの帰還 ... 153 - 164

    隊商宿バレオス⸺モースル⸺出発⸺荒天⸺停車⸺テル・アダス⸺セミル⸺兵士の不満⸺報酬の未払い⸺ドゥルナク⸺ヘイゼル渡河⸺ジェジレ⸺チェルケス人の案内人⸺彼らの暴挙⸺ヴァレンシャハル⸺オルファ⸺珍奇⸺ビラジク⸺古物の調査停止⸺アレッポへの騎行⸺パシャとの紛争⸺箱の引渡し⸺乗船⸺帰還

  • 第十一章 イズドゥバルあるいは洪水に関する伝説群 ... 165 - 222

    カルデア人の洪水譚 — 新出部分 — イズドゥバル — おそらくニムロド — 伝説の古さ — イズドゥバルの征服 — 彼の病 — ハシスアドラ — 洪水 — エレク — 怪物の征服 — ザイド — ヘアバニ — フンババ — イシュタル — 神聖な雄牛 — ヘアバニの死 — イズドゥバルの悲嘆 — 彼の旅 — 巨人たち — ハシスアドラ — 洪水の記述 — 方舟の建造 — 洪水の襲来 — ニジールの山々 — 鳥たち — 族長の訳 — イズドゥバルの治癒 — 彼の嘆き — ヘアバニの亡霊 — 聖書およびベロソスとの比較 — 所見

  • 第十二章 初期バビロニア文書 ... 223 - 241

    エラムの征服—アッカドのサルゴン—彼の誕生—箱舟に隠される—アグ—ベル神の神殿—王への祈り—ウルの王ドゥンギ—クドゥルマブク—ハンムラビ—バビロニアの征服—初期の二言語碑文—トゥラニアン系の文字—セム系の文字—リアグ—コユンジク出土の文書—クルガルツゥ—マルドゥク・バラダン一世—王の授与—境界石碑—呪詛

  • 第十三章 初期アッシリア碑文 ... 242 - 252

    初期陶器――ヴァルニラリ一世碑文――シャルマネセル――イシュタルの神殿――トゥグルティニニプ――バビロニア人との戦い――ムタギルヌスク――アッシュール神リシリム――ティグラト・ピレセル一世――アッシュール神ナジルパル。

  • 第十四章 ティグラト・ピレセル2世の碑文 紀元前七四五年から紀元前七二七年 ... 253 - 287

    ティグラト・ピレセルの年代記⸺その重要性⸺ニムルド出土の粘土板⸺バビロニア人との戦い⸺東方の戦役⸺アラビアの戦役⸺シリアの貢納目録⸺宮殿の建造⸺年代記の断片⸺アザリヤ⸺メナヘム⸺レゾン⸺彼の敗北⸺パレスチナでの戦争⸺ペカ⸺ホシェア⸺聖書の裏づけ

  • 第十五章 サルゴンの碑文 紀元前七二二年から紀元前七〇五年 ... 288 - 294

    歴史的円筒⸺メディアの首長⸺アスルドドとの戦い⸺アズリ⸺アヒミティ⸺ヤヴァン⸺反乱⸺水路の転換⸺ユダ⸺エドム⸺モアブ⸺ファラオへの使節⸺エジプトの衰弱⸺サルゴンの進撃⸺ヤヴァンの逃走⸺サルゴンの印章

  • 第十六章 セナケリブの碑文 紀元前七〇五年から紀元前六八一年 ... 295 - 310

    円筒 C⸺中間記録⸺題名:⸺メロダク・バラダンとの戦争⸺バビロニア征服⸺カッシ征服⸺エリピ⸺パレスチナの戦争⸺ツィドンのエルリアス⸺アシュケロンのズィドガ⸺エクロンの反乱⸺エジプト人との戦闘⸺ヒゼキヤ⸺エルサレム包囲⸺屈服と貢納⸺第二次バビロニア戦争⸺総督からの書簡

  • 第十七章 エサルハドンの碑文(紀元前六八一年から紀元前六六八年) ... 311 - 316

    新出の碑文――タハルカとの戦役⸺ティルスのバハール⸺パレスチナを行く行軍⸺メロエ⸺砂漠⸺水の欠乏⸺長き行軍⸺エジプト征服⸺セナケリブの戦争⸺スズブ⸺エラム人⸺ベル神殿の略奪⸺年代の記されたバビロニア人の粘土板

  • 第十八章 アッシュールバニパルの碑文、紀元前六六八年から紀元前六二六年 ... 317 - 380

    ギリシア⸺サルダナパルス⸺図書館⸺既刊⸺エジプト史⸺シャバカ⸺タハルカ⸺ウンダマネ⸺本文⸺称号⸺タハルカに対する遠征⸺エジプトの反乱⸺タハルカの死⸺ウンダマネ⸺第二次エジプト遠征⸺ティルス包囲戦⸺アルヴァド⸺リディアのギュゲス⸺プサメティコス⸺ミンニとの戦い⸺エラムとの戦い⸺バビロンの反乱⸺エラムとの戦争⸺ナナの復興⸺アラビアの戦い⸺アルメニアの使節⸺宮殿の復興⸺神殿の復興⸺バビロンの煉瓦"

  • 第十九章 ベル神-ザキル-イスクン王、アッシリア王及びその後継者の碑文 ... 381 - 390

    記念碑の欠如⸺歴史の不明瞭さ⸺ベル神=ザキル=イスクン⸺円筒印章⸺アッシリアの滅亡⸺バビロンの興隆⸺ネブカドネザル⸺邪悪なメロダック⸺ネルガルシャレツェル⸺年代付けの方法⸺ナボニドゥス⸺ベルシャザル⸺キュロス⸺カンビュセス⸺ダレイオス⸺三言語碑文⸺アルタクセルクセス⸺パルティア年代⸺重要な証拠

  • 第二十章 諸文書 ... 391 - 419

    光への賛歌――翻訳――イズドゥバルへの祈請――その崇拝――バビロニア人の本文――ベル神への祈り――氾濫――七つの悪霊――彼らの行い――ベル神――シン神、シャマシュ、イシュタル――ムーンへの攻撃――天界の戦争――ヘア神への伝言――メロダックの使命――伝説の比較――神々の性格――天文学――四季――閏月――天測器――食の観測――法の尊重――碑文――書簡――売買証書――アッシュールバニパルの年号――奴隷の売買――音節表――二言語対照表。

  • 第二十一章 外国の碑文 ... 420 - 427

    バグダッドの獅子――エジプト王――ラー=セット=ヌブまたはサイテス――牧者勢力の創始者――ラムセスの碑板――碑の年代――ヒクソス――アモシスの追放――セトの崇拝――獅子の型――ハマトの碑文――ニネヴェの印章――キプロスの碑文――フェニキアの文書――契約の粘土板――パフラヴィーの碑文――後代の文献――ニシビス――記念碑の破壊

  • 第二十二章 技芸と風俗を示す品々 ... 428 - 436

    すでに発見された大形彫刻―壁に嵌め込まれた手―まぐさ石―イシュタルの頭部―像の肩―有翼雄牛―アッシリアの柱―水晶の玉座―水晶の壺―セナケリブの名―燈具―燈具の給油具―アッシリアの叉―玻璃―ローマの瓶―玻璃の印章―陶器―キプロス式―戦車群像―交易―佩用の装身具―指輪―連珠―印章―塚の後代の占有―古物の破壊。

  • 第二十三章 結語 ... 437 - 464

    作業の困難――短期間――良好な成果――バビロニア人の王――アッシリア人の王――新出の碑文――年代の不確かさ――アッシリアの歴史――ユダヤの歴史――プル――聖書に対する新たな光――バビロニア文明の起源――トゥラニア人種――セム族の征服――洪水伝説――神話――ギリシア神話との関係――天文学――建築――今後の発掘の重要性。